傲慢と善良

著者:辻村 深月  出版社:朝日文庫  発売日:2022/9/30  ページ数:504ページ

 主人公は架(かける)と真実(まみ)の2人による恋愛ミステリー小説である。前半は架の視点で物語が進められる。後半は真実の視点で物語が進む。

 架は結婚願望が低く、当時付き合っていたアユに将来のことを聞かれ答えに迷う。その結果、アユから別れを切り出される。その後、アユの結婚をSNSで知り、ショックを受ける。また、周りの友達も次々と結婚していき、架自身焦りを覚えるも年は30代後半と出会える頻度も少なくなり、結婚に焦りを覚える中、婚活アプリに登録する。

 一方、真実は親の言われるとおりに人生を生きてきており、自分では決めることができずに学校や就職、30歳になっても門限まで決められる。さらには、お見合いまで親が勝手に結婚相談所で探してくる始末。それに応えようとするも、真実が求める男性に出会えず。親から自立するために一人暮らしを決心する真実は東京に一人で住み、婚活アプリに登録する。

 婚活アプリで2人は出会い自然と付き合うことになる。付き合ってから2年の月日が経つも架はプロポーズもできずにいる。そんな中、真実は自信過剰と言いつつもストーカーにあっていると架に相談する。架はストーカーについて、そこまで気にもかけない。しかし、数か月後の夜、真実から電話があり、電話越しに「自分の部屋に誰かいる」と恐怖で架に助けを求める。そこから架の家で同棲することになり、架は真実を守らなければと結婚を意識する。

 それから、数か月後に突如、真実は架の前から姿を消す。架はストーカーの被害にあったと考え、真実の実家や元同僚、友達に真実の行動を調べていくうちに真実の過去や嘘に気づいていく。

 その後は、真実の視点となり展開が徐々に明かされていくストーリーとなっている。

 本書の中に傲慢と善良がちりばめられ、お互いの気持ちや他人に対しての気持ちについて事細かく分析されており、どんどん小説にはまり込んでいくような1冊である。